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特殊な洗浄に使われる有機溶剤

 うっとうしい梅雨時は得体の知れない汚れ・シミが気になります。

 洗剤ではなかなか落ちない汚れに対して、仕方なくベンジン等の有機溶剤を使うことがあるかも知れません。
 最近は、一般消費者がトラブルを起こさないよう、簡単に手に入れられないように規制されています。それでも、石油べンジンとか塗料の薄め液などがホームセンターで販売されているし、少し知識のある人はマニキュアの除光液(アセトンなど)を利用する場合もあるようです。また、油絵を描く人々は、薄め液として使い慣れている石油系溶剤を汚れ落としに使っています。
 これら有機溶剤は揮発性が高く、その蒸気を吸い込むことがしばしば繰り返されると、いい健康障害を起こすことがあるので、極力体内に取り込まないよう注意しなければなりません。有機溶剤には脂肪を溶かす性質があり、体内に入ると脂肪を沢山含む臓器(肝臓・神経など)に集中し、身体の機能に影響を及ぼすことがあるのです。
 そのため、ドライクリーニングをする職場に関しては、労働安全衛生の面で注意が定められています。一般消費者も、時にそういう問題に直面することがあるかも知れないので、参考のために以下に有機溶剤と人体への有害性についてまとめて置いたので、参考にしてください。
①炭化水素
  トルエン/キシレン
    麻酔作用・中枢神経障害・経皮吸収される
  ベンジン/テレビン油/灯油/ミネラルスピリット
    麻酔作用・めまい・吐き気・失神
②アルコール
  メタノール/イソプピルアルコール/ブタノール
    麻酔作用・粘膜刺激作用・悪心・めまい・嘔吐・頭痛/特にメタノールに
    は要注意
③ケトン
  アセトン
    麻酔作用・皮膚障害・頭痛・めまい・嘔吐
④エステル
  酢酸エチル
    麻酔作用・高濃度では局所刺激作用
⑤塩化炭化水素
  クロロホルム/四塩化炭素/トリクレン/パークロロイチレン
    強い麻酔作用・肝臓腎臓障害。塩素の数が多くなるほど毒性が強い
⑥グリコール/エーテル類
  エチレングリコールモノエチルエーテル
    麻酔作用・粘膜刺激作用・貧血・経皮吸収される

 どうしても使用するときは
  ※)火気厳禁/作業場の空気の流通をよくする/長時間とどまらない
等々の注意を心掛けること。

作業着・運動着の汚れ(無機物)

 少し前、多くの作業員が土木・建設工事を泊りがけで行っている、いわ飯場で、作業員の作業着を洗たくしている方から話を聞く機会がありました。

「いくら注意して洗たくしても汚れがきれいに落ちない」
というのです。
 寒い時は、特に大変で、漂白剤もかなり使っているのですが、なかなか思うようにならないとのこと。

 これは、一般家庭でも激しい運動をしている子供がいる家庭では同じようなことが起こっているのではないかと思います。
「何故か?」
といっても、洗浄力が弱いからとしか言いようがありません。

 この場合、中性の液体洗剤単独では駄目です。(工夫の仕様次第)
 市販の洗たく用粉末洗剤も、表示に従って使っていてはうまく落ちない場合が多々あります。それは汚れがひどい(=無機物の汚れの量が洗剤の能力を上回っいる)からです。この場合は、使用する洗剤の量を増やすことで、ある程度解決することが出来ますが、何倍くらい使えばいいかというと、現場で得た知識・経験を基にするしかありません。
 もう一つの方法は、アルカリ性住居用洗剤を併用することです。
 洗たく液がアルカリ性であると、無機物(汚れ)と繊維との間に反発力が働き、洗剤成分(界面活性剤)が働きやすくなります。

 洗たくのプロが、泥だらけになったユニフォームを一晩で新品のようにきれいに洗いあげるという話がよくTVなどで語られていますが、それは「メタケイ酸ソーダ」という昔から使われているアルカリ化剤を使っているからです。

 これとは別に、市販の漂白剤ならどうか、という問題があります。
 漂白剤には酸素系と塩素系がありますが、塩素系は一般家庭ではあまり勧められません。もう一つ、安心して使われている酸素系漂白剤の場合、弱酸性の液体のものは逆効果になるので、いくら沢山使用しても意味はありません。
 この液体酸素系漂白剤は、液性が「(弱)酸性」です。
 特に冬期は、液体で使いやすいこともあってよく使われていますが、これを洗剤と併用すると、洗たく液が酸性側に傾いてしまい、無機物の汚れは水流による機械的力による引きはがしだけで、繊維の奥に入り込んだ汚れが落ちにくくなります。その結果、多くの場合❝薄黄色❞っぽい洗い上がりになります。
 従って、安全性を考えると、粉末の酸素系漂白剤をおすすめしますが、市販の粉末洗剤を多めにして「アルカリ性住居用洗剤」を併用すれば、落ちるはずです。

 それでも、どうしても満足できなければ、プロのようにメタケイ酸ソーダーを何とか手に入れて洗うほかはないと思います。

梅雨と洗たく

 この年も早いもので、うっとうしい六月になりました。

 恐らく、またTV-CMで「除菌パワーだ」と騒ぐ洗剤が復活するのではないいかと思います。しかし、実態は他の市販洗剤と特別変わったことはありません。
 洗剤の主成分である陰イオン界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩など)には、それほど強くはない殺菌・除菌作用が認められるのです。それに、洗い流すことで細菌等は除去することが出来るので、微生物による異臭騒ぎは問題になることはないと思われます。しかし、大騒ぎする洗剤のラベル表示をよく見ると、本当に小さな文字で、一種類のウイルスについてテストしたと記してあります。まさに言訳程度の表示でしかありません。ウイルスは「菌」の中では弱い方なので、他の市販洗剤でも、除菌作用は遜色ないと思われます。
 むしろ、その程度では洗った後の異臭問題の方が大きな問題であろうと思います。すなわち、異臭が残っているとか、部屋干しで異臭がするという方が大きな問題です。
 何故なら、「菌」は空気中にいくらでも存在しているからです。洗剤でわずかに除去した以上に存在します。それらの「菌」が洗たくで落ちきれなかった汚れに付着し、それを栄養源として増殖するときに副産物として異臭成分を産生するのです。それ故、異臭防止の第一条件は、何よりも十分な「洗浄力」があることです。
 特に、近年の合成洗剤には、泡消しのために「石けん」を配合している点を考慮しなければなりません。石けんと水に含まれるミネラル分が結合して金属石けんを形成し、泡の表面に吸着することで「泡消し」作用をしています。
 この金属石けんは水に溶けず、洗たく機の壁面や衣類に付着します。これも汚れの一種になるので、洗剤成分はこれらもしっかり落とすだけの能力を要求されます。そして、それらを衣類に残さないよう、ススギをしっかりしなければなりません。
 少量の水で一連の洗たくを完遂する「節水型」を謳う洗濯機もありますが、使用する水の量がどれくらいなのか、自ら使用したときに、感覚としてでもいいので、よく知っておいたほうがいいと思います。

※) 部屋干しで異臭がでるようであれば、pre-過酢酸製剤をお奨めします。水に溶かすと、初めて強力な過酢酸を生じ、それをハンドスプレーなどで噴霧すると、すぐに異臭発生は収まります。
 過酢酸は、現在最も安心・安全な殺菌剤として、無菌室の作製やカット野菜の消毒に用いられています。
  ⇒pre-過酢酸製剤について何か知りたいことがあればBELLITASまで、メール
   等でお問い合わせください。

衣類に残った洗剤成分で肌が荒れるとか?

  この場合、問題を二つに分けて考えることにします。一つは衣類に洗剤成分が残るかということ、二つ目は洗剤成分が肌を荒らす原因になるのかということです。

①まず一つ、洗剤成分が衣類に残るか:
 洗剤成分が衣類に残るのは事実です。標準使用量(適正量)を守っていれば残る量は極めて少量ですが、適当に使用していると洗剤成分が衣類に残る量が多くなることは確かです。大手メーカーの研究員が語るとこでは、三倍以上使用すると、明らか洗剤成分が残るということです。
 そうなると、最近は高濃度のワンパック洗剤を使う消費者が多くなっていますが、洗たく物が少なくてもワンパックを使用することは洗剤の「過剰使用」になり、衣類に残る量も多くなります。
②残った洗剤成分が肌を荒らすか:
 衣類に残った洗剤成分が肌に刺激をあたえたりするのか、という問題ですが、洗剤全体としてのテストはあまり見たことはありませんが、洗剤の主たる成分である界面活性剤に関しては刺激性テストが行われています。
 安全性に関するデータ集によると:

  ラウリル硫酸ナトリウム    ヒト皮膚  250mg/24h MLD(中)
  アルキルベンゼンスルホン酸塩 ヒト皮膚  2.5mg/24h  MLD
  ラウリルエーテル硫酸塩    ウサギ皮膚 25mg/24h   MOD(弱)
  ラウリン酸ナトリウム     ラット皮膚    28mg/24h   SEV(強)
    (ヤシ油石けんの主成分)
  ラウリン酸カリ        ヒト皮膚   9560mg
  食塩             ウサギ皮膚 50~500mg/24h MLD
  炭酸ソーダ(ナトリウム)         ウサギ皮膚 500mg/24h   MOD
  エチルアルコール                     ウサギ皮膚(open) 400mg      SEV

 この数値から見ると、洗たく後に衣類に残る洗剤量はもっと少ないので、洗剤の界面活性剤は心配するほどの皮膚刺激はないと評価されています。

業務用洗剤は特殊なものか

 一般消費者の多くは「特殊なもの」と思っているようですが、洗たく洗剤に関して言えば、市販の洗たく洗剤と同じです。

 ただ、特殊ということで言えば、極めて単純なLAS(直鎖アルキルベンゼン硫酸塩)と二、三の補助剤だけというものがあります。これは、合成洗剤としては極めて古いタイプです。
 昔、クリーニングを業務とする人々は、いわば「職人」と評される特殊技能を持っていました。主たる洗剤成分である界面活性剤がLASだけという極めて単純な組成から成っているものだったので、少し複雑な汚れを落とすためには、自らの経験を基に、特殊な補助剤を選択し、処理していました。
 最近の洗剤は、そうした多くの職人の経験則を参考にして、技術者が研究した結果、多種類の成分を混ぜ合わせたものになっています。それは、作業工程のほとんどが機械化されて、機械の操作を覚えてしまえば、特殊な洗剤や個人的技術の入る余地が少なくなっているからです。特に、大規模な業者ではその傾向が顕著です。
 以前のような職人が少なくなったのか、洗剤がそうした職人を必要としなくなるほど進歩したのか、そこの所はどちらともいえません。
 ただ、洗剤メーカーの努力で一般消費者向けに同じ洗剤が市販されるようになっていることは嬉しいことです。それは、電気洗濯機が日々進化していることと関係していますが、兎に角、現在は業務用と一般用とは包装形態が違うだけで、内容組成は特に変わらなくなっていること事実です。
しかし、注意しなければならないことは、忘れ去られつつあるLASだけの洗剤を、さも特別仕様であるかのように言って高額で販売している業者がいるので、注意しなければなりません。また、TVCMもそうですが、行き過ぎた宣伝をしているメーカー品に関しても、冷静な目を持って判断することをお勧めします。

この機会に、ミラクレール(Mira Clair) MRCについて、少し紹介させてください。

これは、現在市販されている洗たく洗剤とは、組成も機能も大分違います。
1990年代半ばにSt.M医大病院のリネンを一手に引き受けているプロのたっての要望で開発した洗たく洗剤です。
界面活性剤も、補助剤も、一般洗剤とは違い、特にそのために開発したプレ過酢酸製剤を配合している点は、結果においても大きく違っています。
リネンのプロが繰り返し使用した結果、洗剤だけで柔軟・漂白・殺菌の効果まで認められました。
柔軟効果は、被洗物の仕上げで、どうしても素手で扱わなければならない作業員の指先がヒビ割れ、指紋が崩れるという問題がなくなりました。また、折りたたんで重ねた場合、その嵩に雲泥の差が生じました。それは、プロの目にはドラム内での動きでわかるとのことです。
また、殺菌は、現実に簡易的な方法でテストした結果で証明されました。
それは、一般の電気洗濯機で黒いゴミのようなものが沢山浮き出て来たことで判明しました。それ以来です、洗たく機の裏側がひどくカビで汚れていると言い出したのは。初めて見た人々は
「これはなんだ」
と大騒ぎになました。
そして、標準使用量は15g/30ℓと少ないので、排水による自然負荷はどの洗剤よりも少ないという特徴があります。当然、一回当たりの経費も少なくなります。

それから30年以上になりますが、未だ同類の洗剤は他に現れていません。
まさに、リネンのプロと
「これは21世紀の洗剤だ!!」
と納得しあったものです。そのリネンのプロも亡くなって久しく、懐かしい思い出です。




魔法だって、洗剤が

ひさしぶりにドラッグストアを覗いて見ました。

何か買う訳ではありません。
確認したいことがあったので、面倒臭いと思いながらも調べに入りました。

ありましたよ。
「魔法・・・万能洗剤」
とデカデカと表記した洗剤が。
さすがに、呆れました。
幼児のままごと遊びで使う洗剤ではないですよね。
いや、我が国の一般消費者のレベルは「幼児」程度であると見下しているのでしょうか。

医薬品や化粧品には「広告基準」があって言葉遣いにも注意しなければなりませんが、洗剤は「薬機法」の範囲外なので、石けん洗剤工業会の方も、広告基準のような製薬は正式には決めていないようです。
しかし、日本のメーカーは行き過ぎが無いよう自主的に広告の言葉遣いに注意しています。だから、これまで「魔法」なんていう言葉など決して使用しなかったのです。
先の「濃縮」の件も、すでに45年程前に消費者団体との間でやり取りがあり、それ以来広告には使われていないはずです。

それが、今回はよりによって「魔法」とは。開いた口がふさがりません。
洗剤は「科学」であり「魔法」ではありません。
何か、異論が出たら言訳するために、極めて小さい文字で「・・・のような」という言葉を入れています。それこそ、姑息以外の何物でもありません。

そろそろ我が国の消費者も、ゴミ同然の香の強い「柔軟剤」に狂喜乱舞したことを反省し、しっかり洗たくを見直さなければならないのではないかと思います。

・・・あぁ~、言いたいことを言って、スッキリしました。

合成洗剤は石油系、石けんは天然・自然系といわれますが?

 合成洗剤=石油系、石けん=天然・自然系、と言って区別しようとする人々は、今日でも多くいます。でも、少し考えてみてください。石油も自然界に存在するものであることは誰もが知っているはずです。

 従って、こうした区別の仕方は意味をなさないことを、まずしっかり認識してもらいたいと思います。
 その上で、石けんを過信する方々の根拠が極めて曖昧であることを知ってもらうために、我が国での石けんの歴史的経緯を説明したいと思います。

『石けんは歴史上初の合成洗剤である』
と言ったら、多くの人々が《ウッソー!》と言うかも知れません。
「原料は自然界にある動植物油じゃあないの?」
・・・その通りですが、その油から化学的に合成しなければ、石けんは得られません
「昔から、あるじゃない」
・・・昔から合成されていたのです。ただ、合成という言葉を知らなかっただけです。自然界に石けんそのものは存在しません

石けんの歴史を辿ると、紀元前3000年代の古代バビロニアのシュメール族が残した楔形文字の記録文章に
「山羊脂(1)と木灰(5)から石けんを作り、洗たくと医療に用いた」
と記されています。
 即ち、山羊脂は動物性油脂、木灰は木を燃やした後の灰で、主成分は炭酸ソーダです。要するに、油脂とアルカリ性の炭酸ソーダで石けんを作るということで、これは今日でも石けん作りの基本になっています。
 でも、ソープの語源になっているローマの丘「サポ」には土に混ざっていたのではないか、という方々がいますが、サポの丘は祭祀の場所で、常に生け贄として山羊や羊が奉げられていました。火に焼かれ、脂肪がひたたり落ちます。そこには燃料の木灰が次々に溜まります。
 油脂と木灰があり、繰り返し熱が加わることで反応が進み、石けんが形成されていきました。それが知らぬ間に、石けんと土が混ざり合って溜ってしまったのであり、最初から自然に存在した訳ではありません。

 それでは何故、石けんと合成洗剤が別々に言葉として存在するのでしょうか。
戦後、化学工業が急速に発展し、鉱物油・動植物油からいいろな界面活性剤(合成洗剤)が合成されるようになりました。
 一方、石けんは幕末・維新に欧米から輸入されるようになりましたが、当時は「石けん」という名称はありませんでした。あくまでも、原産国の名称に近い発音の「シャボン」あるいは「サボン」と呼ばれていて、しかも一般庶民の目に触れることはありませんでした。要するに、庶民は知らなかったのです。

 石鹸の「鹸」という文字の意味は、灰汁(あく)という意味です。木灰に水を和し、濾して得た液汁のことです。
 幕末、かまどから得た灰汁にうどん粉(小麦粉)の水溶液を混ぜ、暫く放置しておくと、やがて固まって「石」のようになることを発見してから、その塊を「セキケン(石鹸)」と呼ぶようになったということです。これは、小麦に含まれるグルテンが網目状につながる作用によるものです。 
 身近な問題としては、うどんを捏ねているとコシのあるうどんに仕上がるとか、パン生地を暫くの間、寝かせておくとしっかり膨らんだパンになるとか言われていますが、これは、水を加えて捏ねると、グルテンが網目状になって繋がり合うという特異な作用によるものです。
 しかも、グルテンが繋がり合ったものを水で洗い流すと、水溶性タンパク質やデンフン粒が流出し、グルテン塊が分離するそうです。
上述の「セキケン」はそうして得られたものではないかと思われます。

 更に石けんの詳しいことは長くなるので、拙著『化粧品と美容の用語事典』に譲るとして、明治6年に行われたオーストリア万国博覧会派遣された技術者が石けん製造法を習得して来たことが、我が国での石けん製造の起原になったと言われています。
 それ以前、試作に成功したとか、明治4年に製造の先鞭をつけたという話もありますが、何と言っても万博派遣の技術者が初めて「苛性ソーダ」という化学物質を知って知り、それを用いて積極的に石鹸製造を行うようになって、何とか欧米の石けんに近いものができるようになったことが、それ以降のわが国の石けん製造技術の発展につながっています。
 明治10年の第1回内国勧業博覧会には、透明石けんが出品されるほどになり明治20年後半には海外に輸出するようになりました。
 それでも、品質的にはまだ欧米の水準にまで至っていなかったようで、森鴎外は『雁』(1911年)の中で、主人公の言葉を借りて、
「石鹸は本物でなければならない」
と、言っています。要するに、本物というのはヨーロッハ゜の石けん、そしてそれに進化途上のわが国の石けんを対比させているということです。
 注目すべきは、「石鹸」という言葉が使われていることです。明治40年代には言葉としても「石鹸」が定着していることを知る貴重な史料だと思います。

 このように、石けんはわが国の近代工業の発展に多大な成果をもたらし、戦後、石油由来の合成洗剤が発展するまで日本の化学工業をけん引してきた歴史的な物質であったので、その後、石けんと合成洗剤が併存しても、「石けん」の名が残されることになったというわけです。
 JIS規格、家庭用品品質表示法でも別々に規定され、今日まで変わっていません。決して、自然系で安全・安心などという理由ではありません。

 むしろ、俗にいう「自然・天然系」という同類の界面活性剤が、どれも化学合成され、実際に食品・医薬品に大量に使用されています。一般消費者は普段の食生活において必ず摂取していることを認識しなければなりません。
 「合成」だからといって、忌避する理由にはならないことを知ってもらいたいと思います。

何故、価格に大きな違いがあるのか

市場に出回っている洗剤は、大きく価格が異なるものがあります。

何故、それほど価格が違うのか、内容成分に違いがあるのか、効果に差があるのか、消費者には理解できない問題です。
例えば  ◎クリーニングの専門業者が使っている
  ◎環境問題や安全性に厳しいドイツからの輸入品だ
  ◎アメリカではNASAに納品されている
とか、消費者の気を惹く言葉が添えられています。
 最近のテレビCMのキャッチフレーズでも、
 ○抗菌・除菌効果が優れている
 ○超消臭・部屋干し用の
 ○洗浄力が従来の洗剤を越えた高濃度
 ○濃縮洗剤だ
とか、兎に角、洗剤では当然のことを殊更大きく取り上げて喧伝しています。
 特に、濃縮洗剤については四十年ほど前に、消費者団体とある外資系との間で
 「濃縮」の意味についていろいろやり取りがなされていたのですが、ここに来てまたその問題が繰り返されることになりました。
 抗菌・除菌についても界面活性剤そのものに程度の差はあれその効果があるので、取り立てて言うほどのことではありません。
 部屋干し・消臭に関しては、洗剤でしっかり汚れが除去されていれば問題にされるような効果ではありません。それを強調するということは、これまでの洗剤がしっかり汚れを落としていない、ということを言っているようなものです。

 それなのに、商品の価格が違うのはどうしてでしょうか。
 一個の商品では価格に差がありますが、それを洗たく一回あたりにして計算しなおしてみてください。
 まず、BellitasのミラクレールMRCです。
   1.5㎏入りで¥18,00-⇒標準使用量で100回分
      一回の使用量(水30ℓに対して):15g
      一回当たりの単価:¥18円
      界面活性剤量:12%  全有機炭素量(TOC)=1.8g
   従来のコンハクト洗剤
           一回の使用量(水30ℓに対して):25g
                                                                          ⇒100回分に換算すると ¥2,500-
      他の粉末洗剤   一回の使用量(水30ℓに対して):25g 
          界面活性剤量:23%  TOC=5.75g   
   液体洗剤   界面活性剤量:58%  TOC=5.8g 水30ℓに対して10g(40回)
                                      界面活性剤量:21%  TOC=5.25 水30ℓに対して25g(35回)
他の洗剤の現在の価格を調べていませんが、どれも100回分に換算してみたください。特に、最近のワンパック洗剤では100回分でどれほど高額になるか、簡単にわかると思います。

どれだけミラクレールMRCが経済的か、表向きの商品価格だけでは判断できません。それに、環境問題においてもTOCが1/3で、他のものより環境に対して十分考慮されていることが明らかです。
 それに、St.M医科大学病院のリネンのプロが20年以上使用した結果、ミラクレールMRCには消臭・漂白・柔軟の効果もあるので、別に用意する必要はないと言っています。確かに、他にはない特殊なメカニズムを組み込んでいるのでいるので、余分な経費を節減できます。それ故、洗たくを全体的に見れば、一番使いやすい洗剤であると評価してくれました。(残念ながら、十年数年ほど前に他界されました=21世紀の洗剤のキャッチフレーズは二人で考えたものです)

いろいろな洗剤があるが、どこに違いがあるのか

 洗たく洗剤(合成洗剤)は、その洗浄作用の主体である界面活性剤の種類で三系統があることは前述した通りです。その他に配合される成分は以下に示すもので、特別大きく違うものはありません。ただ、それぞれの配合量が異なるだけです。

 ただ、これ等は、原料を一度水に溶かして均一な状態にし、それをドライスプレー処理して粉末化する製造方法をとっている大手メーカーの場合で、近年、撹拌(ミキシング)方法で製造する場合もあり、その場合には水に溶かすと効力を失う原料も配合できるので、一部の業務用洗剤などに取り入れられています。
 合成洗剤以外に、洗たく用洗剤として石けん(高級脂肪酸塩)があります。
 石けんは歴史上、もっとも古くからある合成洗剤で、「合成洗剤」というと必ず、❝いや、自然の洗剤❞だと異論を唱える方々が未だに多くいるので、この事に関しては改めて別の機会に説明します。

いわゆる「合成洗剤」は界面活性剤の他に、界面活性剤の作用を補助・増強する「ビルダー」と呼ばれる補助剤が配合されています。
 ○粉末洗剤の補助剤:アルミノケイ酸塩(ゼオライト=水軟化剤)・炭酸塩・硫酸
   塩・ケイ酸塩など。これらは工程剤剤とか増量剤と呼ぶ場合もありますが、
   その呼称は、少し的外れでもあるので、今日ではあまりその呼称は使われて
   いません。
   また、炭酸塩・ケイ酸塩は、洗たく液をアルカリ性に保つために必要なので
   「アルカリ化剤」とも呼ばれています。
 ○液体洗剤の補助剤:グリセリン・プロピレングリコール・ジエチレングリコー
   ル、そして「アルカリ化剤」(中性洗剤では必要ない)としては、もっぱらト
   リエタノルアミンが配合されています。
 これらの他に、蛍光剤・色素・香料などが配合されます。最近は、強烈な香りをつけていますが、本来、香料は原料臭を誤魔化す(マスキング)ことを目的として配合されていました。
 色素は、大体青系統のものが用いられます。以前、「という手法があり、青味づけ」という手法があり、青色をかすかに白生地につけると、目の錯覚で白みが増して見えるという現象があるので、蛍光剤を使用しない洗剤に利用されていました。ただ、化学合成品の蛍光剤に比べると明度が劣るということで、現在はあまり利用されていません。

 全体に見ると、界面活性剤・補助剤・その他の成分から成り立っていますが、実際にはそれぞれのメーカーによって配合の割合が異なって来るということで、製品に違いをもたらしているということになります。
 最近は、ワンパック化した商品が宣伝されていますが、組成的には何等異なるものではありません。

どんな洗剤があるか

 洗剤は、その用途によっていろいろな呼称がありますが、一般消費者向けには「家庭用品品質表示法」により洗たく洗剤・台所用洗剤・住居用洗剤の三種類があります。それらも更に細分化されていますが、要は消費者が用途・目的を間違わないように認識することを促すために区分しているのです。


その中から、まずは洗たく洗剤を採り上げることにします。
少し専門的になりますが、汚れに焦点をあてた場合、二つに区分されます。
  ①しつこい汚れ用・・・重質洗剤:heavy duty
  ➁軽い(しつこくない)汚れ・・・軽質洗剤:light duty
 洗たく洗剤では、通常の洗たく機による洗たくで使用されるものは「重質洗剤」で、綿・麻・ほとんどの化学合成繊維の素材を対象としています。一方、絹・ウール・アセテートなどを素材とした「おしゃれ着」の洗たくに使用される洗剤は「軽質洗剤」になります。
 重質洗剤で「おしゃれ着」を洗うとどのような影響があるのかというと、
   色落ち・繊維の縮み・風合いの変化
といった変化を生じることがあります。従って、「おしゃれ着」を洗う場合は、よく繊維の品質表示のタグをみて確認し、洗剤を選ぶ必要があります。

現在、市場で販売されている洗たく洗剤(重質洗剤)は次の三タイプがあります。
  粉末洗剤:以前から広く使用されているタイプ・・・計量スプーンなどを使用。
  液体洗剤:自動投入システムの洗たく機の普及・・・一定量を自動的に投入す
    る。自動システムではない場合は計量カップを使用。
  ワンパック洗剤:携帯用などの目的で以前から存在しました。
    最初のものは、吸湿性の少ない「パウチ(小袋=pouch)」という形になっ
    ていて、封を切って中の洗剤を投入するものでした。それが、近年のコイ
    ンランドリーの普及もあって需要が多くなり、水溶性高分子(ポリビニル
    アルコールなど)膜で包んだタイプが一般にも知られるようになりまし
    た。これは、そのまま洗たく機に投入すればいいというう手軽さがありま
    す。
 粉末洗剤は、水の量・洗たく物の量(汚れの程度)によって使用量を加減できますが、自動投入用洗剤・ワンパック洗剤はその加減ができないので、洗剤の無駄使いをしてしまうという問題があります。これは、環境問題が顕在化している今日、排出される「全有機炭素量(TOC)」が多くなることで問題視されています。

内容成分に関しては主たる作用を示す界面活性剤により三タイプに分けられます。
◎陰イオン界面活性剤を主剤とするもの
  (1)直鎖アルキルアルキルベンゼン硫酸塩(LAS)
  (2)@オレフィン硫酸塩(AOS)
◎その他
  (3)非イオン系・両性系
 わが国ばかりでなく、世界的に陰イオン界面活性剤を主剤とする洗剤が主流を占めています。これは、特別な理由はなく、合成界面活性剤としての二種類が早くから多量に作られ使用されていたからで、それぞれの原材料として界面活性剤を製造するメーカーを中心としたグループが最終製品をも製造販売しているからです。
 その二種類に拘らず、非イオン界面活性剤を主剤とする洗たく洗剤は、アメリカが多く製造販売しています。我が国でも非イオン系の洗たく洗剤は生産されていますが、まだ微々たるものです。ただ、使用する水の性質(液性・硬度など)にあまり影響を受けないので、将来は期待が持てるのではないかと思われます。
 今のところは、陰イオン界面活性剤の短所を補完するために、陰イオン界面活性剤が補助的に配合されているだけです。

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